鈴木敏恵 校長会講演記録②|ポートフォリオ―「標準から唯一へ」AI時代の評価と教師の役割(2026.7.30)
鈴木敏恵 校長会講演記録②|ポートフォリオ―「標準から唯一へ」AI時代の評価と教師の役割(2026.7.30)
資料|令和8年度(第63次)県東ブロック学校長研修会要項
主催|茨城県学校長会・県東ブロック学校長会
開催|2026年7月30日(木)
講師|鈴木敏恵(未来教育デザイナー・一級建築士)
※研修会開催要領をクリックすると、茨城県学校長会「県東ブロック」公式ページへ移動します。
2026年7月30日、「令和8年度 県東ブロック学校長研修会」において、未来教育デザイナー・鈴木敏恵が小中学校の校長先生方61名を対象に講演を行いました。
講演では、AI時代に一人ひとりの違い、経験、関心、得意なこと、夢や願いを未来へつなぐポートフォリオと、人間の先生にしかできない役割についてお伝えしました。
「標準」から「唯一」へ
みんなと同じであること、一般的であること、標準化・規格化できることは、AIやロボットが得意とする領域です。
AI時代には、一人ひとりの違い、経験、関心、得意なこと、ものの見方、夢や願いが、これまで以上に価値を持ちます。
子どもが今、将来の夢を明確に言えなくても問題はありません。
自分が好きなこと、やってみたいこと、大切にしていることを表現し、それを見てくれる人がいる。その経験が、その子の未来につながります。
ポートフォリオとは何か
ポートフォリオは、完成した作品だけを集めたファイルではありません。
目標、活動、情報、写真、メモ、スケッチ、下書き、成果、評価などを一元化し、学びや成長のプロセス全体を俯瞰できるものです。
ポートフォリオには、次の価値があります。
● 目標・成果・評価が明確になる
● 結果だけでなくプロセスを見ることができる
● 数値化できない個性、能力、才能、唯一性が見える
● 本人がどのように考え、変化し、成果へ到達したのかがわかる
● 学んだことを進学、就職、留学などの未来へ生かせる
【画像|資料1・3ページ「標準から唯一へ―ポートフォリオ」】
ポートフォリオには、事実と根拠を残す
ポートフォリオへ入れる記録には、日付、場所、出典などの事実を添えます。
写真だけでなく、最初のメモ、スケッチ、下書き、失敗した試作品、途中で考え直したことなども残します。
完成した成果だけではなく、そこへ至るまでの記録があることで、「本人がどのように考え、何をして、どのように成果へ到達したのか」が根拠をもって見えるようになります。
小学校で作った作品や、子どもの頃から夢中になってきたことが、将来の進学や仕事につながることもあります。
ポートフォリオは、小学校のなかだけで完結するものではありません。その子の経験を未来へつなぐものです。
3つのポートフォリオ
鈴木敏恵は、ポートフォリオを次の3つに整理しています。
テーマポートフォリオ
特定の学習やプロジェクトの目標、プロセス、成果を残します。
パーソナルポートフォリオ
自分の好きなこと、関心、得意なこと、大切なもの、経験などを残します。
キャリアポートフォリオ
蓄積した記録から、本人が目的に応じて必要なものを選び、進学、就職、留学などの未来に生かします。
キャリアパスポートに、写真、作品、メモ、活動記録などの根拠を加えることで、その子のオリジナルな成長が具体的に伝わります。
Padletで「自分の好きなもの」を共有
会場では、校長先生方がスマートフォンを使い、自分の好きなものや大切なものをPadletへ投稿しました。
好きな食べ物、動物、場所、趣味、家族から贈られたものなど、さまざまな写真や言葉が集まりました。
「これは何ですか」
「いつから好きなのですか」
「どのような思い出がありますか」
好きなものをきっかけに対話すると、自然に言葉が生まれ、一人ひとりの経験や背景が見えてきます。
デジタル化によって、共有の仕方、対話、評価、先生の役割まで変わること。それがDX(デジタルトランスフォーメーション)です。
【画像|資料1・4ページ「DX この世は知の果樹園」】
グッドニュースから対話を始める
子どもと対話するときも、職員会議でも、まずグッドニュースから始めます。
「今日、あの子が手を挙げました」
「いつも下を向いていた子の顔が、少し上がりました」
「自分から写真を見せてくれました」
問題や困難だけを見るのではなく、その子に起きた小さな変化、よかったこと、できたことを共有します。
「頑張っていますね」「いいですね」で終わらず、「これは何ですか」「どうしてこれを選んだのですか」と、さらに言葉をかけます。
ポートフォリオを一緒に見ながら対話することで、子どもは自分の経験を話し、自分でも気づいていなかった関心や願いを言葉にできます。
日常のなかにある、その子の価値を見つける
評価されるのは、大きな賞や優れた成績だけではありません。
● 家族のために料理を作った
● 自分の好きなものを撮影した
● 模型や作品を作った
● 昨日より少し顔が上がった
● 今日、初めて手を挙げた
● 一本の線を描いた
こうした一人ひとりの小さな変化や表現も、その子にとって価値のある事実です。
先生がそれを見つけ、言葉にして本人へ伝え、写真や作品としてポートフォリオへ残します。
評価とは、点数をつけることだけではありません。その子が生み出したものや行動のなかに、価値を見いだすことです。
先生の一言が、子どもの未来を変える
講演では、鈴木敏恵自身の小中学校時代の経験もお話ししました。
小学生のとき、工作を見た先生が「すごいな」と言ってくれたこと。中学生のとき、ものづくりが好きなことを見いだした先生が、工業高校の建築科を勧めてくれたこと。
その言葉が、建築、未来教育、PBL、ポートフォリオへとつながりました。
子どもが、その場では先生の言葉の意味を十分に受け止めていなくても、10年後、20年後に再びよみがえり、その人の力になることがあります。
子どもの好きなことや小さな変化を見つけ、言葉にして本人へ伝えることは、人間の先生にしかできない大切な役割です。
AI時代にも、人間の先生が必要な理由
知識を分かりやすく教えるAIや動画は、今後さらに増えていきます。それでも、学校には人間の先生が必要です。
先生は、毎日同じ場所で子どもと出会っています。
「昨日と何か違う」
「今日は少し表情が明るい」
「いつもより言葉が少ない」
こうした小さな変化を、子どもの生活、家族、友人関係、好きなこと、これまでの様子と重ねて受け止めることができます。
目の前の子どもを直接見て、感じ、言葉をかけ、行動し、その結果に責任を持つことは、AIには委ねられません。
【画像|資料1・5ページ「鈴木敏恵自身のポートフォリオ」】
校長会講演記録|全3回
● 第1回|AI活用ガイドライン・PBL・AI時代の「意志ある学び」
【第1回のURL】
● 第2回|ポートフォリオ・評価・AI時代の教師の役割
【このページのURL】
● 第3回|AI×学校防災・学校の災害リスクマネジメント
【第3回のURL】
▼講演を聞いた校長先生方の感想



