2026年08月26日

鈴木敏恵 校長会講演記録③|AI×学校防災―学校平面図・校内写真から始める災害リスクマネジメント(2026.7.30)

鈴木敏恵 校長会講演記録③|AI×学校防災―学校平面図・校内写真から始める災害リスクマネジメント(2026.7.30)

令和8年度(第63次)県東ブロック学校長研修会要項|鈴木敏恵講演「AI時代の羅針盤」資料|令和8年度(第63次)県東ブロック学校長研修会要項
主催|茨城県学校長会・県東ブロック学校長会
開催|2026年7月30日(木)
講師|鈴木敏恵(未来教育デザイナー・一級建築士)
※研修会開催要領をクリックすると、茨城県学校長会「県東ブロック」公式ページへ移動します。

2026年7月30日、「令和8年度 県東ブロック学校長研修会」において、未来教育デザイナー・一級建築士の鈴木敏恵が、小中学校の校長先生方61名を対象に「AI×学校防災」の研修を行いました。

学校平面図や校内の写真を生成AIへ添付し、地震発生時の危険箇所、避難動線、教職員の優先行動、子どもへの声かけ、事前の改善策などを検討しました。

【画像|資料2・1ページ「子どもたちの命を守る!AI活用 学校の災害リスクマネジメント」】

AI活用は、まず子どもの命を守るために

AIやDXを教材作成や業務効率化だけに使うのではなく、まず子どもたちの命を守るために活用する。

これが、鈴木敏恵から校長先生方への提案です。

学校には、それぞれ異なる校舎、教室、家具、避難経路があります。そこにいる子どもの年齢、人数、特性、教職員の配置も異なります。

一般的な避難方法を知るだけでなく、自分たちの学校の現実を見て、その場所、その時間、その子どもたちにとっての危険を具体的に確認する必要があります。

学校平面図から地震リスクと避難動線を確認する

学校の平面図を生成AIへ添付し、震度6以上の地震が発生した場合に想定される危険、避難経路、教員の声かけ、事前の改善策などを整理します。

AIへ伝える内容は、具体的であることが重要です。

● 対象となる教室
● 子どもの学年と人数
● 教員の人数
● 地震の規模
● 揺れている間の行動
● 揺れがおさまった後の行動
● 避難経路
● 教員の声かけ
● 事前にできる改善

たとえば、次のように伝えます。

「添付した学校平面図をもとに、授業中に震度6以上の地震が発生した場合の避難ガイドを作ってください。小学校3年生と担任がいる想定で、主な危険、揺れている間、揺れがおさまった後、避難経路、教員の声かけ、事前の改善策を部屋別に示してください」

【画像|資料2・2ページ「校舎の平面図で安全点検」】

AIの回答は、職員会議の「たたき台」

生成AIが示した避難経路や改善策は、学校防災の正解ではありません。

平面図の読み取りを間違えることもあります。学校固有の事情や、日常の子どもの動きを十分に理解していないこともあります。

AIの回答をそのまま採用するのではなく、

「この場所には、別の危険があります」
「この避難経路は実際には使えません」
「この時間には、ここに別の学年がいます」

と、教職員が現実と照らしながら確認します。

AIは、見落としていた危険や別の可能性を見つけ、職員会議で話し合うための「たたき台」として活用します。

特別支援教室の個別避難支援

特別支援教室では、一人ひとりの特性に応じた避難支援が必要です。

講演では、特別支援教室に児童5名、教員1名がいる場面を設定しました。

児童の状態として、

● 大きな音や揺れでパニックになりやすい
● 教室から飛び出しやすい
● その場で固まりやすい
● 歩行に時間がかかる
● 短い声かけで比較的落ち着く

という5名を想定し、AIを活用して具体的な避難支援を検討しました。

地震発生直後の30秒に教員は何をするのか。誰を最初に守るのか。どの時点で他の教員へ応援を求めるのか。どのような声かけをするのか。日頃から教室環境をどう整えておくのか。

教員1名で5名全員へ同時に対応することはできません。そのため、子ども一人ひとりの特性を踏まえ、優先行動と応援体制を災害が起きる前に検討しておく必要があります。

【画像|資料2・3ページ「特別支援教室の個別避難支援」】

校内の写真から、子どもにとっての危険を発見する

会場では、校長先生方がスマートフォンで室内を撮影し、写真を生成AIへ添付するワークを行いました。

たとえば、AIへ次のように伝えます。

「この写真の中で、小学校1年生にとって危険になりそうな場所を指摘してください。危険である理由と、すぐにできる改善策を提案してください」

同じ場所でも、小学校1年生と6年生では、危険になる箇所が異なります。

子ども、保護者、高齢者、乳児を抱いた人など、誰にとっての危険なのかを具体的にすることで、確認する視点も変わります。

AIは危険箇所の見落としを減らすために活用できます。しかし、最後は必ず人間が現地を確認し、改善するかどうかを判断します。

【画像|資料2・4ページ「校内の危険箇所を画像で確認」】

プロンプトには「現実」と「事実」を入れる

通常の教室と、授業参観で教室後方に約25人の保護者がいる状態とでは、災害時の状況が異なります。

「小学生にとって危険な場所」とだけ伝えるのではなく、

「授業参観中、小学校2年生30名と、教室後方に約25名の保護者がいる状態」

のように、人数と状況を伝えます。

AI活用のプロンプトで最初に必要なのは、難しい技術や特別な言葉ではありません。

● 何のために使うのか
● 誰のために使うのか
● 何を実現したいのか
● 現実はどうなっているのか
● どのような事実と条件があるのか

これらを具体的にすることです。

目的、現実、人数、場所、子どもの状態などを伝えることで、学校固有の検討材料が得られます。

最も厳しい状況を想定した避難訓練へ

毎回同じ条件で避難訓練を行うだけでは、実際の災害に対応できない可能性があります。

● 防火扉が閉まっている
● 授業参観で保護者が多数いる
● 体育館や特別教室を使用している
● 出入口付近に人が集中している
● 教職員の人数が限られている

こうした状況も想定し、学校内で起こり得る厳しい条件のもとで避難方法を検討します。

ワンパターンの避難訓練を繰り返すのではなく、自分たちの学校で起こり得る現実を考え、教職員と子どもが自分の頭で判断できる避難訓練へ変えていくことが重要です。

子どもたちが作る「学校避難ブック」

校内の危険箇所を調べる活動は、子どもたち自身も行うことができます。

子どもたちが校内を歩き、廊下、階段、教室、体育館、校庭などを撮影します。写真、学校平面図、現地で得た情報をもとに危険箇所と改善策を考えます。

その成果を「学校避難ブック」や校内マップとしてまとめ、校内放送やプレゼンテーションで共有します。

自分たちが発見した危険をもとに、避難訓練の方法を提案することもできます。

これは、現実を見て課題を発見し、情報を獲得し、解決策を社会へ提案するPBL(プロジェクト学習)です。

【画像|資料2・5ページ「自分の命は自分で守ろうプロジェクト」】

AI×学校防災で大切にすること

AIには、学校平面図、写真、人数、子どもの状態などの事実を伝えます。

AIから得た提案は、教職員や子どもたちが話し合うための材料にします。

そして、現実の学校を直接見て、最後に意思決定し、結果に責任を持つのは人間です。

AIを活用して危険を可視化する。
人間が現地で確かめる。
教職員と子どもが対話する。
最後は人間が判断する。

AI×学校防災は、AIに命を委ねることではありません。AIも活用しながら、人間が現実を見て、子どもたちの命を守る学校をつくることです。

校長会講演記録|全3回

● 第1回|AI活用ガイドライン・PBL・AI時代の「意志ある学び」
【第1回のURL】

● 第2回|ポートフォリオ・評価・AI時代の教師の役割
【第2回のURL】

● 第3回|AI×学校防災・学校の災害リスクマネジメント
【このページのURL】

▼講演を聞いた校長先生方の感想