AI×Vibe教育(3)ビジョンとゴールから始まる学び──PBLとバイブコーディングの未来
すずきとしえ 鈴木敏恵 Suzuki Toshie の草稿の一部
(バイブ・コーディングと未来教育)
第3回 ビジョンとゴールから始まる学び──PBLとバイブ・コーディングの未来
◆リード文
未来教育が出発点とするのは「ビジョンとゴールを描くこと」です。あそこまで行くぞ、と未来を見据える視線から学びは始まります。今回のテーマは、その出発点の意義と、AI時代に登場した「バイブ・コーディング」がそれをどう後押ししているのかです。
◆ビジョンを胸に、未来を見るところから
私が提案している未来教育は、「小さな知識を積み上げる」ことから始まるのではありません。最初にあるのはビジョンとゴールです。遠くに見える未来を「そこに行きたい」と胸に抱いたとき、全体の形が浮き上がります。
人はゴールを思い描くと、自ずと「そこに向かうために必要なことは何か」を考え始めます。これは単なる学習計画ではなく、自分の意志を伴った探究です。そして実際にやってみると失敗や試行錯誤が待っていますが、そこにこそ学びの本質があります。
◆試行錯誤の価値
プロジェクト学習(PBL)の中で最も価値あるのは、この試行錯誤のプロセスです。正解をあらかじめ与えられて進むのではなく、ビジョンに近づくために仲間と共に考え、挑戦し、修正していく。
この過程で生まれるのは単なる知識の習得ではなく、新しい価値そのものです。ゴールに到達したときに形になる成果物は、他者に役立つ「知の成果」であり、その喜びは比類のないものです。
◆学びは現実の中で展開される
プロジェクト学習は机上の学びではありません。現実社会の中で夢を形にし、現実に役立つものをつくり出す行為です。しかもそれは一人ではなく、チームで、意見やアイディアを出し合いながら進みます。
そこには、未来を共に描き、共に実現する喜びがあります。この協働的な創造こそが、ポストDX時代に教育が担うべき役割だと私は考えています。
◆AIとバイブ・コーディングが示すこと
ここで、AIの進化が生んだ「バイブ・コーディング」を思い出してください。これはまさに「雰囲気(ビジョン)から始め、試行錯誤を経て形にする」スタイルでした。
ビジョンとゴールから始めるプロジェクト学習の方向性は、AIが生み出したこの新しい創造の仕方と響き合っています。つまりAIは、未来教育が大切にしてきた学びの姿を改めて後押しし、その価値を浮き上がらせてくれているのです。
◆結び──ポストDX時代の教育に向けて
プロジェクト学習がなぜポストDX時代の教育の中心になるのか。
その答えの一部は、AIと人間の感覚が重なり合う「バイブ・コーディング」の方向性に見いだせます。
未来を胸に描き、全体を見ながら、仲間と試行錯誤して新しい価値を生み出す。これこそが未来教育であり、AI時代の教育の羅針盤となるでしょう。
[参考]
「バイブ・コーディング(Vibe Coding)」とは、正式な専門用語というよりも最近注目されている表現で、特に生成AIを使った新しいプログラミングのスタイルを指すことが多いです。
従来の「コーディング」は仕様を決めて、アルゴリズムを設計し、コードを手で書いていくプロセスでした。
一方で「バイブ・コーディング」は、
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AIと対話しながら
仕様や実装を細かく詰めるのではなく、「こんな雰囲気で作りたい」「こういう感じのアプリ」という**感覚(バイブ、vibe)**を伝える。 -
即時的に試す
AIが生成したコードを動かし、出てきた結果を見ながら「もう少しこう」「ここを明るい感じに」と修正していく。 -
完成度より体験重視
最初から正確に仕上げるというより、短時間でプロトタイプを形にし、**“雰囲気を共有する”**ことを重視する。
つまり、
🔹「AIと一緒にライブ感覚でコードを作っていく」
🔹「厳密な仕様書ではなく“バイブ(雰囲気や感覚)”を起点にする」
という特徴を持つスタイルです。
これは、デザイナーや教育者、エンジニア以外の人でも直感的にアプリやシステムを試作できる方法として注目されています。