AI時代の教育[2/2] 「人間ならではのビジョン力 ― 未来教育プロジェクト学習でかなう」
すずきとしえ 鈴木敏恵 Suzuki Toshie の草稿の一部。
テーマ:「人間ならではのビジョン力 ― 未来教育プロジェクト学習で実現」
最近の国際学会で発表された最新の研究によると、AIは「言葉を理解する」だけでなく、「未来の中間イメージ」を描き出してから行動を決めるようになってきました。これまでのAIは、言葉をひとつひとつ積み上げて推論するのが精いっぱいでした。しかし今は、先に“全体のイメージ”をつかんで、そのうえで細かい行動を導き出すのですという進化を見せています。
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AIが進化しても、最後に未来を描くのは人間です。どんなに便利な技術が登場しても、「全体を構想し、未来を描く力」は人間だけが持つかけがえのない力です。そしてその力を、どうすれば教育の中で育てられるのか──その答えのひとつが、私が提唱してきた未来教育プロジェクト学習です。
本文
1. 人間がもつ「ビジョン力」
人間の思考の大きな特徴は、部分を積み上げるだけでなく、全体をイメージし、未来を構想することができる点にあります。建築やデザインの仕事がそうであるように、ありありと全体像を描き、そのイメージを現実にしていく。これは人間ならではの創造的な力です。
2. 未来教育プロジェクト学習で身につく力
未来教育プロジェクト学習は、人間ならではの「未来を描く力」を実際の学びの中で育む仕組みです。そのプロセスは次のように展開します。
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現実直視 ― 目の前の現実を直視し、解決すべき課題を見いだす。
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ビジョンを描く ― 未来がどうなったらいいのか、そのありたいイメージを具体的に描く。
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解決策の構想 ― 目の前の現実の中でビジョンを実現するために、リアル空間やデジタル空間から情報を自ら獲得し、課題解決策を生み出し、行動する。
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実現 ― 現実に行動することで、現実をより良くする「新たな価値創造」を果たす。
この流れを体験することで、学習者は「未来へビジョンを描き、それを現実に近づける力」を確実に身につけていきます。
3. 支える三つの手段 ― PBL・ポートフォリオ・対話コーチング
未来教育プロジェクト学習を支えるのが、三つの有効な手段です。
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プロジェクト学習(PBL):ビジョンを現実に近づけるプロセスを実際に体験する。
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ポートフォリオ:自分の思考と行動の軌跡を記録・可視化し、学びを振り返る。
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対話コーチング:他者との対話を通じて気づきを深め、自分の意志を磨く。
これらが有機的に組み合わさることで、学びは「点」から「構造」へ、そして「未来を描く力」へと発展していきます。
AIがいくら進化しても、「ビジョンを描く」ことは人間にしかできません。未来教育プロジェクト学習は、その力を教育の中で育てる具体的な方法です。プロジェクト学習・ポートフォリオ・対話コーチング──この三つを組み合わせることで、未来を生み出す力へとつながります。
参考文献
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鈴木敏恵『AI時代の教育と評価 ― 意志ある学びをかなえるプロジェクト学習・ポートフォリオ・対話コーチング』教育出版
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「未来教育プロジェクト学習」ウィキペディア(鈴木敏恵が1988年から提唱)
https://ja.wikipedia.org/wiki/未来教育プロジェクト学習