2025年08月26日

AI×教育:第2部【「意志ある学び」を具現化する3つの手法】

第2部:「意志ある学び」を具現化する3つの手法

「意志ある学び」という哲学は、私にとって単なる理想論ではありません。それを現場で実際に機能させるために、私は三つの手法を三位一体で提唱してきました。プロジェクト学習(Project Based Learning)、ポートフォリオ、そして対話コーチングです。この三つが結びついたときに、学びは抽象的な理念から、現実に生きる人を育てる確かなシステムへと変わります。


2.1. プロジェクト学習(PBL):現実世界と学びを接続する思考プロセス

私が提唱するプロジェクト学習(PBL)は、従来の「与えられた問題を解決する」Problem-based Learning(課題解決型学習)とは根本的に異なります。その核心にあるのは、「何のために、何をやり遂げたいのか」という学習者自身の“意志”を起点にすることです。意志を出発点としたとき、学びは単なる知識習得にとどまらず、社会に役立つ「知の成果物」を生み出すプロセスへと変わります。

実際に私は、教育現場で「災害に強いまちづくりプロジェクト」や「大切な人の健康を守る提案集」といった取り組みを進めてきました。そこには子どもたちや学生が、自分の目の前にある現実を直視し、未来に価値を生み出すアウトプットを形にしていく姿がありました。まさに、意志を持って現実とつながったときにこそ学びは生きて働くのです。

このPBLの強みは、その普遍性にあります。特定の教科や専門分野に閉じるものではなく、教育、医療、防災、キャリア開発など、あらゆる領域に応用が可能です。その理由は、PBLが「特定の知識」を教えるのではなく、「普遍的な思考プロセス」そのものを育むものだからです。

学習者は、目標を立て、情報を集め、計画をつくり、実行し、成果物を生み出し、発表する――その一連の流れを経験します。このプロセスを繰り返すことで、どんな課題に直面しても応用できる“未来を切りひらく力”が養われます。私は、この循環が教育の核に据えられるとき、学びが「生きる力」へと昇華していくと確信しています。

PBLの普遍的プロセスと多分野の実践事例
※キャプション例:「PBLが教育・医療・防災・キャリア開発など多様な領域で活用されていることを示す図」

2.2. ポートフォリオ:学びの軌跡を可視化し、知を凝縮するツール

私にとってポートフォリオは、単なる「学習記録の集積」ではありません。それは、学びや仕事のプロセス全体を「俯瞰」し、自分自身を客観的にとらえるための大切なツールです。私はポートフォリオを、「自分が作ったもの、そして自分を作ったもの」を一元化し、そこから新しい知を再構築する仕組みとして位置づけています。

学習者はポートフォリオを通じて、自らの学びを記録し、振り返ることができます。その過程で、自己の学習プロセスを深く理解し、次のステップに進むための洞察を得ることができるのです。情報を収集し、選び、整理し、そして捨てる。この一連の思考の技術が繰り返されることで、より深い思考力や洞察力が自然と育まれていきます。

ポートフォリオの価値が「単なる評価ツール」を超えるのは、それが個人の内面に深く関わり、「自己肯定感」や「キャリアデザイン」に影響を及ぼすからです。活動の軌跡を振り返りながら、「自分は何を学び、何ができるようになったか」を具体的に認識できたとき、それは「成長の証」として目に見える形になります。この実感こそが、自分への信頼感や肯定感を育て、未来に向かう力へと変わっていきます。

私は、ポートフォリオを「過去」と「未来」をつなぐ架け橋だと考えています。自分が積み重ねてきた経験を可視化することで、そこから未来のビジョンを描き出す――ポートフォリオは、時間を超えて学びと人生を結び直す、まさに“意志ある学び”の中核を支えるツールなのです。


👉 「ポートフォリオ=記録」ではなく「未来へつなぐ物語」

2.3. 対話コーチング:内発的動機を引き出す対話の技術

私にとって対話コーチングは、プロジェクト学習とポートフォリオを真に機能させるための“エンジン”です。つまり、学びのプロセスを前へと進め、学習者の「意志ある学び」を支援するために欠かせない手法だと考えています。

AIが膨大な情報を瞬時に提供してくれる時代だからこそ、人間同士の「対話」の価値はますます高まっています。AIは5W1Hに基づく情報を整然と提示することに長けていますが、「なぜこの情報が必要なのか」「なぜこの問題に取り組むのか」という“WHY”を自ら立てることはできません。

だからこそ、対話が必要になります。対話はこの“WHY”を深く掘り下げ、他者の視点を取り込み、新しい意味を創り出すための重要な場です。指導者や仲間とのやり取りの中で、「見えない問題」が言葉となり、「本質」を見抜くための問いが生まれていきます。

特に医療や教育の現場では、AIでは代替できない「感情的な理解」や「倫理的な判断」が求められます。対話はこうした繊細な要素を共有し合い、チームとして洞察を深めることを可能にします。そして、対話を通して得られた複数の視点や洞察が重なり合うことで、AIには決して生み出せない「新たな価値」が創造されるのです。

私は、対話コーチングを通じて学習者自身の“意志”を引き出すことができると信じています。それは単に学びを支援する技術ではなく、人が自らの未来を描き、歩み始めるための力を与える営みでもあるのです。

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