2025年08月26日

第1部【意志ある学び – 未来教育のコア】1.1.〜.2 :AI時代における教育のパラダイムシフト

第1部:「意志ある学びー未来教育」のコア

1.1. AI時代における教育のパラダイムシフト

AIは現代の教育に新たな課題を投げかけています。

同時に、教育が本来果たすべき「人間を育てる」という役割をより鮮明に浮かび上がらせています。

AIは膨大なデータからロジックや判断条件を導き出し、”WHAT”(何が)や”HOW”(どうやって)を整理することに優れています。

その力は、私たち人間が持つ観察力や洞察力を深めるための手がかりにもなりえます。

けれども、AIには限界があります。

人の気持ちを汲み取ることや、倫理的な判断、経験を糧に生まれる人間独自の創造性をそのまま再現することはできません。

特にAIには、”WHY”(なぜ)という問いを自ら生み出す力は備わっていません。

私は、AIを人間を置き換える存在ではなく、人間を支える「サポートイネーブラー*」として捉えています。

大切なのは、AIの論理やデータをただ受け取るのではなく、人間がそこに「見えない問題を見抜く力」を働かせ、自分が求めるものをを投げかけることです。その対話によって、AIの応答は私たちに新しい視点やヒントをもたらしてくれる。そして人間はそのヒントを手がかりに、自らの意志で進む方向を決め、本質的な問題解決へとつながる洞察を得ていくことができます。

この循環的な学びのプロセスこそ、私が「未来教育」の根幹として提唱している思想です。

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*サポートイネーブラー

顧客からの問い合わせやサポート業務を効率化するためのツールやシステムを指します。

主な機能としては、FAQの自動応答、チャットボット、ナレッジベース、チケット管理システムなどがあります。これにより、顧客は自己解決できることが増え、サポート担当者はより複雑な問題に集中できるようになります。

1.2. 私が提唱する「意志ある学び」とは:内発的な探求と成長の哲学

「意志ある学び」とは、従来の「与えられた課題をきっかけに学ぶ」という受動的な学びのスタイルから、「自ら目標へ向かう」能動的な学びへと転換することを中心に据えた概念です。私はこの哲学を通じて、学習者が自分自身の願いや目標を実現するために、自律的に学び、行動する力を育むことを大切にしています。そして、その学びの過程で数値では測りきれない「非認知能力」――たとえば、やり抜く力、我慢する力、共感する力といった、これからの社会で欠かせない能力が培われていくのです。

私のビジョンが少しユニークかもしれないのは、この「非認知能力」の育成を、建築士としての専門から「空間」という概念と結びつけている点です。建築を通じて私は「空間認知能力」が、物事を立体的にとらえ、全体を俯瞰する力の基盤であることを学びました。その経験から、教育における「空間」も単なる教室や家のような物理的な場所にとどまらないと考えるようになったのです。むしろ「空間」とは、リアルな場と、インターネットやAIといったデジタルの場を自在に行き来しながら、情報を獲得し再構築する「思考の場」へと拡張されていきます。

この拡張された「学びの空間」を行き来することで、学習者は多様な視点から情報を集め、自律的に考える力を身につけます。たとえば私が提唱してきた「ライフプロジェクト」の実践では、生徒たちがリアル空間での活動と、デジタル空間やAIツールでの情報探索を行き来しながら試行錯誤を重ねていきます。そのプロセスを通じて、抽象的に語られがちな「非認知能力」が、実際の行動と結びつき、具体的に育まれていくのです。

これは、AI時代という複雑で広がりのある情報空間を乗りこなし、自らの意志で学びを深めていくための、極めて実践的で希望に満ちたアプローチだと私は信じています。