2023年12月07日

【新聞記事】PBLで教員志望意欲が向上

(以下 本文)教員不足が深刻だ。教員志望の学生の確保と質の向上が喫緊の課題の中、10月21・22日に開催された「意志ある学び-未来教育全国大会2023オンライン」の初日、北海道教育大学は、大学1年生の教職論PBL(Project Based Learning)を行ったことで教員志望意欲が向上した事例を報告した。主催はシンクタンク未来教育ビジョン(鈴木敏恵代表・未来教育クリエイター・一級建築士)。PBLやポートフォリオに関心を寄せる全国の教育関係者210人の申し込みがあった。なおPBLに役立つ資料は「未来教育ライブラリ」と検索するとDLできる(https://suzuki-toshie.net)。

北海道教育大学では今年度より、3キャンパス(札幌・旭川・釧路)でPBLを採り入れたところ、60%以上の学生が「教職を目指す意識が高まった」と回答。「イメージが広がり未来への期待が高まった」「自分のしたい教育活動が明確になった」「正解のない学びに取り組むことは楽しい」「対話により学びが深まることを理解できた。対話は楽しい」と前向きな感想が多く届いたという。同大学の永山昌史教授と山中謙司准教授が成果や学生の受講の様子について報告した。

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北海道教育大学「教職論PBL」2回で何をしたか
「教職論PBL」特別講師 鈴木敏恵

○4月(教職論スタート時)=「PBLとは何か」「ビジョンシート」の説明と「教職論PBL」全体を把握(5分程度の動画)

○PBL1回目(7月上旬)【前半】PBLを進める上で重要な学習者との「対話」のポイントをモデル対話を通して伝える。「ビジョンシート」に「自分が何が好きで関心があるのか」「その好きなことを活かしてどんな教育活動をしたいか」「その教育活動で子供に身に付く力」を記入。【後半】ワークショップでは互いのシートを見て対話。良いところを発見し合う。相手のモチベーションが上がる『価値発見』と相手のビジョン実現に役に立つアイデアや情報を伝える『知の提供』がアクティブな対話の鍵。口頭で伝えた後はカードに記入して渡す(ポジティブフィードバック)。

○PBL2回目(7月下旬)=【前半】PBLの基本フェーズで身につく力(下表参照)を説明。さまざまな事例やPBLを実践した教員(小中~大学)のインタビューも紹介。【後半】ビジョンを実現するために有効な知識や学びを、互いに協力しながら大学シラバスから検索するなどして「学びデザインシート」に記入。最後に学生の気づきや未来志向を高めるメッセージを伝える。https://youtu.be/tLN8Eo9st7I

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授業観が転換学生が成長した
北海道教育大学 永山昌史教授
調査によると、本学の教員就職率は65%。これを75%にまで引き上げたいと考えており、課題を設定して探究するという基本的な思考の枠組を身に付ける科目を設置した。さらにPBLは全員がスタート期に行うことが大事と考え、1年次「教職論」全15コマのうち2コマをPBLの共通講義とし、専門家の鈴木敏恵氏に教職論PBL特別講師を依頼。3キャンパスで同内容を行うためオンデマンド講義とした。その結果、学生の「教員を目指す意識」や「すべきことを自ら考え出せる力」が向上。学生同士で対話を通して自分の好きなことを意識化し、授業イメージを拡げる様子が目の前で繰り広げられた。

■オンデマンド講義でもアクティブラーニング
「自分の好きなこと」を核に、それを活かす授業を考え出すという明確な目的があるからこそ、学生同士の対話が真剣になり、互いへの有効なアドバイスを生き生きと行うことにつながったと感じている。学生は自分で情報を得たり活動したりすることの意味を理解でき、ビジョン=授業イメージの描き方を体感したようだ。

モデル対話でイメージがわく
北海道教育大学 山中謙司准教授
旭川校の学生と鈴木氏とのモデル対話を視聴することで学生は、生徒の言動の意図をくみ取ってアドバイスを行う必要があることや、イレギュラーなことに対する柔軟性の重要性を理解できたようだ。自分の好きなことについて、対話を通して考えることが大きな刺激になり、それが、自分には伝えたいことがある、だから教員になりたいという意識に変わっていく様子に感動した。

理科では昔から問題解決学習に取り組んでいるが、多くが予定調和に基づいたもの。今回のPBL体験は、予定調和ではない問題解決という授業観の転換につながった。

 

 

看護師を目指す学生がPBL成果をプレゼン
国際ティビィシィ小山看護専門学校
当日は、PBLを採り入れている国際ティビィシィ小山看護専門学校(栃木県)の学生が成果を披露。ChatGPTによる対話と現実社会でのフィールドワークを通して、自分のビジョンを実現するための「学びのデザイン」をプレゼンした。

学生たちのプレゼンに、山中准教授は「自分の専門性を前向きに捉えて夢を持ちながら学ぶ姿は教員養成大学にとっても参考になる」とコメントした。

全国組織の医療機関の樋口看護室長は「素晴らしい。学生のうちからフィールドワークで視点を拡げている。スーパーナースになりそう。期待が高まった」、鈴木氏は「迷ったり悩んだりしたときに今日の自分のプレゼンを見てほしい。そのためにもポートフォリオは重要」と語った。https://youtube.com/playlist?list=PLMBtxivqF_D6BVAkzcq64w6b-css3etab&si=J4hW7aDGbHHIHYTs

社会見学もオンラインでPBL
埼玉県立常盤高等学校
PBLに長年取り組んでいる埼玉県立常盤高等学校は、150人の高校生が島根県の西川病院とオンラインで社会見学を行ったPBLについて報告。PBLではGoogleClassroomやYouTubeを使って反転学習を行った。

同校には看護科がある。社会見学で生徒は「看護師のほか栄養士や薬剤師など病院に所属する様々な専門家の視点を知ることで、看護について多面的に考える機会になった」と報告した。https://youtu.be/m2nfLDMBHDo