2024年10月02日

連載:Gakken 教育ジャーナル Vol.26 「正解のない学び」の鍵 ! 目標設定のポイント   『ウェルビーイングを実現するプロジェクト学習』 

https://gakkokyoiku.gakken.co.jp/journal_category/k-journal/

https://suzuki-toshie.net/gakken-well-being/

探究学習など「正解なき学び」はうまくいっていますか?
プレゼンスキルはついたようだけど‥調べ学習とは違う、新時代を生きるための力は身についているのかな?‥と感じることはありませんか?

「正解なき学び」はプロジェクト学習の手法で行うとうまく行きます。その鍵となるゴール(目標)の設定についてAIとの関連を含めお伝えします。

* この連載では、未来教育プロジェクト学習(”意志ある学び”を理念とする新しい時代を生きる力が身につく学び。プロジェクト学習とポートフォリオ、対話コーチングをその主たる手法とする。)を以後、プロジェクト学習と表現する。

 

今までの教育では果たせない、新しい知性や感性、意志が新しい時代には必要となります。定型的なこと、正解のあることなどは、AIやテクノロジーに任せ人間は人間にしか果たせない、人間だからこそ大切にする必要があることに教育をシフトしましょう。

 

一人ひとりの未来ビジョンを大切にすること、それを現実にする力(表参照)が求められます。AI や新しいテクノロジーをパートナーとしつつ、ビジョン(願い)を共にする仲間と新たな価値を生み出す力が湧き上がる教育が求められます。

 

<本格的AI時代へ‥‥教育キーワード>普遍的な教育ビジョン
□ 変化に対応できる人
□ 新たな価値創造:自尊心と創造性 (台本やお手本なしで)行動できる人
□ 自分で考え、その影響も考え、行動できる人
□ 考えるためには情報がいる‥自ら情報を獲得できる人
□ 思考力、判断力、課題解決力だけでなく現実にアクション(行動)できる人
□ 自分も他者も大切にできる心

「探究学習」「課題解決型学習」など正解のない学びはプロジェクト学習の手法で行うことで成功します。成功とは、学習者の確かな成長、意志ある学び(主体的に学び、生きる)の高まりです。
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プロジェクトは、現実を直視することから始まります。
ビジョン(ありたい状態)と現実の間に「課題(なんとか解決しなくては!)」は存在します。
(筆者が提案する未来教育プロジェクト学習(以後、PBL:プロジェクト学習)は、主に アーキテクチャーのプロジェクトをその考え方の基盤としています。)

 

■プロジェクトの基本フェーズ

建築のプロジェクトも社会的プロジェクトも共通するフェーズがあります。プロジェクト学習も同様です。
[準備]のフェーズでは、状況や現実を見ます、現実を直視して、課題を見出します。

[ビジョン・ゴール]のフェーズでは[準備]のフェーズと合わせ、ビジョンを現実にするために意志を持って進めるために重要なフェーズです。ビジョンを「具体的な目標」にします。学習者自身が、自分たちの方向性を決め、ビジョン(目的)とゴール(具体的な目標)を決められるようになることがねらいです。

 

【図3】プロジェクト学習の「基本フェーズ」と「身につく力」

■ 何のために(目的)何をやり遂げたいのか(目標)

「プロジェクト」は辞書では「構想」「計画」。ビンジョン(目的)とゴール(目標)のない「構想」「計画」は存在しません。
プロジェクトには、ビジョンとゴールが存在します。
ゴールはビジョンの実現です。

何のために何をやり遂げたいのかが明確。ゴールを明確にすると言う事は「意志ある学び」を叶えることになります。

未来に描いた明確なゴールに「ロックオン」
プロジェクト学習(Project Based Learning)とは、学習者自身がビジョン(目的)やゴール(目標)を明確にして向かう学びです。

■学習のゴール=他者に役立つ「知のアウトカム」
プロジェクトとは今までなかったものを生みあげる、未来に向かって新たな価値を創造するもの
プロジェクト学習も然りです。
プロジェクト学習は、与えられる人ではなく、ギバー(他者へ提供できる人・与えることができる人)を生む
プロジャクト学習の目標(ゴール)は、自分の願いだけでなく、同時に他者に役立つものとします。自分と社会のために自分たちがやることは価値あること実感することで モチベーションが高まり意思を持ったスタートとその継続をかなえます。

 

【図4】 プロジェクト学習のゴールは『新たな価値創造』

 

■ 事例:プロジェクト学習のいろいろな成果(アウトカム)

■プロジェクト学習の『目標設定』 

「探究学習」などでは、しばしば先生が子どもたちへ「関心あること」「好きなこと」「やりたいこと」をテーマにしていいと伝えます。すると「ダンス!」「平和とは」「食について」「環境について」「地域の魅力のこと」「絶滅危惧種について」という言葉が出てきます。‥が、この表現のままゴーサインを出してはうまくいきません。
広域的、抽象的で具体的に何を学習のゴール到達としているのか不明なので、 どこまで情報集めていいかが分かりません、ネットで検索して上の方に出てきたもの(情報や知識)それについて(手当たり次第)調べ、分析、整理して発表という‥これまでの『調べ学習』と同じようなものになってしまう可能性が高いからです。

 

■ それの何をしたいの?

「関心あること」「好きなこと」「やりたいこと」でスタートしても、それだけでは、自ら思考や工夫の深みへ突き詰めることや継続的なモチベーションを持って進めることが出来ません。
そこに気づいた先生方は、子どもたちから出てきた「食について」「環境について」「地域の魅力のこと」「絶滅危惧種について」という言葉のままでなく、更なる問いを彼らに投げかけます。

「それをどうしたいの?」「何をしたいのか?」「したいことはなんなのかな?」を学習者へ問いかけ、彼らが意欲的、主体的に向かえるように「何を具体的にやりたいのか?」「やってみたいことは何?」と意義あるものへ発展させることにかなりの時間を使います。

 

■ 「知りたい」→「願い・何とかしたい」

「探究学習(活動)」‥‥私が知りたい事はこれです、とかこれについて調べますと言うことをそのまま受け止めるのではなく対話を展開させます。

「知りたいこと」「やりたいこと」があることはいいことですが、それだけでは「知ったら終わり」「やったらゴール」となってしまいます。そこには新しい成長や他者意識がありません。
知り得たことを報告する、自分がしたいことをして発表する‥‥だけであれば、文化祭的イベントと何が違うのか?となりがちです。

探究活動でやりたいことは?関心あることは?考えてを書きましょう。 ここに対し
「食について」「絶滅危惧種について」「ペットの写真を可愛く撮れる工夫」というような表現であればそのままにせず対話コーチングが必要です。何を、どこまで、何(誰)のためにしたいのかが明確ではないので、調べて発表になりがちだからです。実際、Google検索すれば山ほど、ここに関する情報があります、もちろん生成AIを活用すれば、発表に至るプロセスから成果までスマートなアウトカムを得ることができてしまいます。

例:

×「車いすサッカーについて」
△「車椅子サッカーの魅力が分かる見方を提案します」

〇「〇〇小学校の低学年に車椅子サッカーの魅力が分かる見方を提案します!」
〇「地産地消プロジェクト!〇〇地区の産物を生かした高齢者が摂取しやすく必要な栄養が摂れる3食を提案します。」
〇「〇〇小学校高学年が、可能な行動範囲で絶滅危惧種について情報を集める方法を提案します」
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*実際のところChatGPTで以下のような提案を得ることができます。

プロンプト→
「車椅子サッカーの魅力が分かる見方を提案してください」
https://chatgpt.com/share/a723cde3-ec9f-47bb-a88e-92734c84f7b6

 

■ テーマをビジョン(願い)へ昇華する
「〇〇について」をテーマとするのではなく、「〇〇について、〇〇したい」「こうなりたい」と、対話を通じ、テーマをビジョン(願い)へ昇華させます。

目的(何のために)や具体的な目標(何をやり遂げたいのか?)を明確にしていくこと、くっきりと頭の中にイメージがシャープに浮かぶ対話コーチングが秘訣です。

頭の中に見えていることを簡潔な文章にします(言語化)します。そのこと事態が重要であり教育のねらいでもあります。

* シャープとは:鋭いさま。(映像などが)はっきりとしているさま。(頭脳、センスなどが)鋭敏なさま。とぎすまされて、いきなさま。

 

<ポイント>

・学習者が書いたテーマをそのままいいねと言うわけにはいかない

・そこにビジョン(願い)・ゴール(やり遂げたいこと)の存在があるか

・ここに対話コーチングでいかに支援できるか、ここが新しい時代の教師に求められる。

・探究においても課題解決型学習においても「正解でない学び」を成功させるためには、『問う』だけでなく、対等に言葉やノンバーバールな表現や沈黙をも含めやりとりしつつ「知を紡ぐ」対話コーチングを展開する。

 

<『目標設定』ー言語化ポイント>

□  そこに何らかの「願い(こうなったらいいな:ビジョン)」がある

□  課題解決したいことがある
□ 曖昧性がなくパッと見ただけで何をしたいのかがわかる□ 実現可能でかつ挑戦的か(今までやったことがない、自分が成長する必要がある)
□ 簡潔で端的な表現(30文字ほど)とする、サブタイトルつけてもいい
□ キャッチコピーに走らない

❌ 「〜〜〜について」
❌ 「キャッチコピー」
❌ 「曖昧な表現」

 

■ 対話コーチングとは
https://suzuki-toshie.net/about-coaching/

対話コーチングとは、その人が本来持っている考える力や気づきを引き出す、相互の敬意・対等を前提とする言葉のやりとりです。相手を信じて待つ沈黙の間も含みます。

対話コーチングで「新たな価値創造」

 

(後ほど、詳細アップ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ 「プロジェクト全体の目標」と「チームの目標」の関係

プロジェクト学習を始めるときに、その計画書やタイムスケジュール作成などChatGPT など活用することで先生たちの仕事にかかる時間をぐんと減らせます。また学習者にとってもAIを補完的に活用することで、多面的に課題を捉える視点など課題解決能力や創造力をさらに高めることができます。

[先生向けの活用]
1. アイデア出しとブレインストーミングのサポート
2. 教材作成とコンテンツ提供
3. フィードバックの提供
4. コーチングと対話支援
5 評価基準の策定など

 

[生徒向けの活用]
1. リサーチと情報収集
2. 課題解決の多面的なアイディア提供
3. 文章作成と校正
4. 対話と思考の整理
5. プレゼンテーションの練習

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