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【鈴木敏恵の未来教育インフォメーション】
第690号/2021年12月27日発行[転送可]
発行者:シンクタンク未来教育ビジョン
鈴木敏恵( http://www.suzuki-toshie.net )
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教育DX‥さあ!組織の[研修]を未来化しよう!
新型コロナの影響もあり一気に進んだGIGAスクール構想。子どもたちに一人一台の端末とWi-Fi環境の整備、コンピテンシー重視の新しい学習指導要領のスタート、ここにきて激変する学校教育。
社会がこれから迎える新人たちは、私たちとはまったく違う教育を経験しているわけです。
組織の研修も大勢が同じ空間で一斉に知識伝達をするような集合研修は、もはや完全に時代遅れです‥たとえコロナが終焉を迎えても、これまでの研修イメージとはっきりと決別する必要があると実感しています。
『Google空間』がステージ!
今年も長野県看護協会の講師をさせていただきました。
名称は、県委託事業[令和3年度看護学生等実習指導者養成講習会]で、私が受け持った科目は「教育方法」です。
2021年9月から11月までの期間、実習指導者養成に必要な多様な講習会が実施され、複数の講師がそれぞれ講義を受け持ちました。
ハイブリッド(対面・オンライン)で展開。
研修に参加される皆さんも主催サイドも臨機応変であることが求められるというご苦労の多かった中、いま現場で求められている実習指導者養成の学びを確実にされたこと本当に頭が下がります。
教育DX‥オンラインで研修を変革する
9月は新型コロナ感染の波が一層高くなり私の講座もオンラインで行うことと判断されました。
コロナ禍だからやむなくオンラインで残念、とは思いませんでした。むしろ皆さんと新しい挑戦ができることをワクワクしていました。その背景として、昨年コロナ感染が広がり学校にも影響が出ていた5月に、すでに約80名の自宅待機になっている学生たちへ先生方と力を合わせオンライン講義を実施して以来、今日まで全国の教育機関とオンラインで様々なプロジェクト学習を展開している経験があったからです。
今回の講義では、身近なZoomとYouTubeに加え、Google Classroomをフルに使いました。
組織の指導者への研修なので、このデジタルを活かす学びの経験も役立つと考えたからです。
未来志向で「したいこと」があればスキルはなんとでも身につく!というのが実感です。
*参考「コロナ禍を逆手に!オンラインで良好な人間関係」
https://suzuki-toshie.net/blog/archives/795
*参考「テクノロジーに命を吹き込む」
https://suzuki-toshie.net/blog/archives/504
教育DXの哲学とビジョン
DXは、単にデジタル化することではなく「デジタル化することで“根本的”に変化する」です。
そこには、何のためにデジタル化するかという哲学やビジョンの存在が必要です。
「与えられた学びから、意志ある学びへ」これが教育DXの目的です。
ここにプロジェクト学習とポートフォリオが次世代教育のプラットフォームとして応えます。
プロジェクト学習とは、未来志向で目の前の現実に立ち向かい、自ら情報や知識へ手を伸ばし創造的な思考で時代が求めている価値ある成果をチームワークで生み出す次世代型の学習手法です。
プロジェクト学習のゴールは「他者に役立つ知の成果」を生みあげること、そのプロセスで意志ある学びで一人ひとりが成長する教育が実現することが教育DXのねらいです。
ポートフォリオとは、目標を到達する軌跡(知識や情報・意見・アイディアなど)を一元化するもの。
目指す目的のために手に入れた情報や思考を俯瞰しつつ他者や自己と「対話」します。
学びの価値は「知の共有」のプロセスそのものです。
「成果」そのものより、そこへ向かうプロセスやストーリーを重要とします、それが次世代教育のビジョンであり哲学です。
[資料]未来化 8つのファクター
https://suzuki-toshie.net/mm-images/mm690-4.jpg
[資料]プロジェクト学習・ポートフォリオとは
http://suzuki-toshie.net/mm-images/MM002.pdf
参考文献:『ポートフォリオとプロジェクト学習』
https://amzn.to/3pnEIPL
「Zoom+Googleクラス+YouTube」で新しい研修へ
今ある身近なデジタル手段を複合的・戦略的に活かすことで、コロナ禍であってもこれまでの研修を根本的に変革し、魅力ある創造的なものにすることができます。
「Zoom+Googleクラス+YouTube」で参加者の皆さんや看護協会の担当の方と力を合わせ実践した新しい研修の一部をここからお伝えします。
初めは「Zoom」、続けて「Google Classroom」と「YouTube(限定公開)」を活かしました。
Google Classroomとは‥
Googleが提供する授業プラットフォームの1つ。課題の提出、作成、フィードバック、様々な情報の共有や共同作成が可能。質問や互いの関与や学習成果を作成するプロセスなど自動的に保存されポートフォリオとしての機能も果たす。世界の多くの学校で導入されつつある。
チームワークでアウトカム(成果)を生む研修
参加者は、長野県内37の医療施設の臨地実習指導者(予定含む)50名です。
実習の領域別に13のプロジェクトチームに分かれてスタートしました。
プロジェクト学習とポートフォリオをプラットフォームとして展開。最初の講座でポートフォリオ、プロジェクト学習について簡単な講義を行い、同時に事前準備していただいたポートフォリオでワークショップも行いました。
プロジェクト学習のゴールは「知の成果」を生み上げることです。
今回のゴールは新しい看護教育を先取りした『“情報”と“地域”を活かす- with コロナ臨地実習シラバス』の作成です。
以下を見ていただくと、このプロジェクト学習が意図することのイメージが掴めると思います。
DXで未来型研修へ
ここから「デジタル化により、何を変革させたのか」その手段と効果などをお伝えします。
【Google Classroomで共同作業】
勤務時間や居住地もバラバラな研修生が共同して情報を持ち寄り、意見や考えを出しあいああかな、こうかなと試行錯誤しつつ「知の成果」を生みあげるために「Google Classroom」で作業を進めます。
【Zoomによるオフィスアワー】
本来の研修日と研修日のあいだもZoomで希望に応じ研修生の質問に答える場、Zoomによるオフィスアワーを設けた。ここに仕事を持つ研修生全員が参加できることはありませんので、Zoomの録画機能を活かします。
【YouTubeによる個別最適な学び】
参加できなかった人たちのために録画した動画をYouTube「限定公開」にてアップして、いつでもどこでも何回でも視聴できるようにしました。
【YouTube‥何度も繰り返し視聴】
参加できた人も何度か自分のペースで視聴していることが動画再生カウントでわかりました。
基本的に学校の授業であれ、研修であれ何度も何度もマイペースで再度見ることができる環境が求められるところ。
【Google Classroomで情報のやりとり】
YouTube動画のURLを全員に知らせる場としても「Google Classroom」を活かします。
講師から一斉に情報提供したいことは目立つように特定の印(★★★など)をつけ「Google Classroom」の最上に目立つようにしておきます。
プロセスに関与する ファシリテータとして
【Google Classroom‥対話コーチング】
新鮮な情報、動画、その場で出ているみんなの考えをテキスト化したり、講師はそれらを画面共有して提示することはもちろんですが、それだけではありません。
Google Classroomでスタート期から段々に成果となる「思考プロセス」が見えるので、そこへ対話的なコーチングを添えます。
また一人ひとりの情報や経験などがそこに積み重なり「知が構築」されていくその経過が見えるので、エビデンスの確認なども含め客観的にアドバイスをすることもZoomで行いそのやりとりもYouTube(限定公開)でいつでも繰り返し見ることができるようにしておいた。
【Google Classroom‥生命を持つポートフォリオ機能】
ネット上で講師は、コーチやファシリテーターとして参加者同士のやりとりや情報共有を促します。
思考を可視化するコメントやアイディアメモなどがGoogle Classroomのポートフォリオに残るよう促すことも講師(ファシリテータ)の大事な仕事です。
デジタル空間における「知の共有」
何より有効で価値を持つのは、参加者同士の「知の共有」がデジタル空間でしなやかに叶うことです。
課題に対し、各自が獲得した情報をもとに話し合い考え出した課題解決、思考、判断‥その躍動的プロセスが刻々と見える、まさしく生きているポートフォリオ機能をGoogle Classroomの存在が果たしてくれます。
プロセスに関わる-深く考える
結果を見て評価するだけでは人は伸びません。結果ではなくプロセスに関わることで初めて成長に関与することができます。これはポートフォリオの本質でもあります。
Zoomの「画面の共有」でGoogle Classroomを映しながら、多人数で作成や編集しているそのプロセスを俯瞰したり、プロジェクトの目的へ向かい増えつつあるポートフォリオへアドバイスをする、それに対して考え、改善する‥その逐一のプロセスをネット空間でみんなが共有できるから、そこにいる全員が深い思考で参加、成長することを果たすのです。
【プレゼンテーションへ瞬間的に全員コメントで参加】
Zoomの画面共有で「Google Classroom」にある成果をプレゼンすることで、全員から画面のテキストで一気にプレゼン後のコメントや質問を受け、プレゼンターはその中から瞬時に選んで「声」を出し、その人たちへ返答するという、互いの意志あるやり取りが叶った。
Zoomのチャット欄は、その時だけのやりとりですが、Google Classroomは、ネット空間にずっと存在するので、いつでも個別の質問者へでも全体へでも応えることができ発展性を持ちます。
参加者の感想
・最初は不安しかありませんでしたが様々な活用の仕方を見てネット上でもこんなに学べるんだと実感しました。
・Google Classroomは初めて使用し、慣れないのでむずかしかったですがプレゼンを通して、全員の意見や感想をタイムリーにやりとりできるのがいいと思いました。
・小学校3年生の子どもが授業でClassroomを使っていると言ってました。最先端のツールで研修できる体験が良かった。
・Google Classroomは全体で共有できて他のチームの内容も参考になり、またデータで残るのでよいと思う、また同じものをチームメンバーが遠隔から同時に作ったり修正したりできるので1人の負担にならずによかった。
※『Google空間』をステージにした未来型研修へ一緒にチャレンジし、素晴らしい成果を生みあげた参加者、関係者のみなさんへ敬意と感謝で胸がいっぱいです、本当にありがとうございました。
(鈴木敏恵)
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◆[連載]教育DXの波
https://jnapcdc.com/LA/onlinelec_3/
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