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【鈴木敏恵の未来教育インフォメーション】
第635号/2020年3月26日発行[転送可]
発行者:シンクタンク未来教育ビジョン
鈴木敏恵( http://www.suzuki-toshie.net )
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ポートフォリオを教育に活かす
今、学校や教育の現場にポートフォリオはずいぶん広がりました。しかし、「ポートフォリオ、使っています」というところでも、学習活動の記録、そのリフレクションを書かせて終えているケースが多いのではないでしょうか?
「もっとポートフォリオを学習に活かそう」と文部科学省サイドから提唱されても、現場では、「それって具体的にどうすればいいいの?」という声が聞こえます。
ここに応え、この連載では「ポートフォリオを教育に活かす方法」を具体的にお伝えしようと考えています。
その前提として、あたらめて「ポートフォリオ」に関するイメージの共通化を図りたいと思います。
「キャリアポートフォリオ」と「テーマポートフォリオ」の明確な違い
まず「キャリアポートフォリオ」と「テーマポートフォリオ」を一緒にしないで分けて考えます。
(小中学校でこの4月からスタートする「キャリア・パスポート」は「キャリアポートフォリオ」を指しています。)
「キャリアポートフォリオ」には、経験や活動、自分が生み出した作品や資格などが入っていますので、そこから資質や個性が見えます。キャリア教育や進路面接などで活きます。
一方「テーマポートフォリオ」は、学習や研究など日々の教育活動で使います。
この「ポートフォリオを教育に活かす方法」という連載では、以後、特記なき限り「ポートフォリオ」と表現したものは、「テーマポートフォリオ」を指します。
「元ポートフォリオ」を『対話と思考』のために活かす
「元ポートフォリオ」と「凝縮ポートフォリオ」という表現についてもあらためて書きます。
筆者が提唱してきたプロジェクト学習は、「知の成果物」=「凝縮ポートフォリオ」を生み出すことをゴールとしています。
そのゴールへ至るまでに手に入れた情報やデータ、考え出した課題解決のアイディアなどをどんどん入れていくファイルが「元ポートフォリオ」です。
以後、特記なき限り「ポートフォリオ」と表現したものは、この「元ポートフォリオ」を指します。
この「元ポートフォリオ」の存在があってはじめて「知の成果物(凝縮ポートフォリオ)」は生み出されます。
「元ポートフォリオ」があることで学習者の思考や判断のプロセス、その決め手となった情報・データなどを知ることができます。また必要なときは、最適なタイミングで対話的なコーチングで関わり深く考えることを促すことができます。
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先ずは「酢豚を作る!」という明確なゴールを
プロジェクト学習は「酢豚を作る!」というゴールに向かい、そのために必要な材料(情報)を手に(元ポートフォリオに)入れ、必要な段階を踏み下ごしらえをしてそれを料理を作り上げることに似ています。
教育で大事なのはこのプロセスにどう関わることができるのか?ということであり、皿に盛られた酢豚を作らせ、その出来を評価することではありません。
学習者がよりよく成長するためにはプロセスが見える存在=「元ポートフォリオ」の存在がいるのです。
「元ポートフォリオ」には、学習や研究などを進めていく中で、そのゴールへ向かうためにどうしても必要な情報やそれを元に考えた思考や判断メモなど手に入れた細かないろいろなものが入っています。
元ポートフォリオからは、そのスタートから成果を生むまでの思考プロセスが見えます。
プロセスが見えるから肝心な時点で対話コーチングのをしたり、ゴールからずれかかった活動を修正するためのフィードバックもできるのです。