【未来教育MM681】ポートフォリオとオンライン学習(2) 暗黙知は共感で引き継がれる

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【鈴木敏恵の未来教育インフォメーション】
第681号/2021年7月30日発行[転送可]
発行者:シンクタンク未来教育ビジョン
鈴木敏恵( http://www.suzuki-toshie.net )
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目次

暗黙知は共感で引き継がれる

人間を守り大切にする仕事

ひとコンピテンシーについての画像

ひとコンピテンシーとは

教育者も医療者も「ひとコンピテンシー」を高度に求められる仕事です。
とくに看護師は(患者と呼ばれる状態にある)人、目の前のその人のいま現在の心身の状態とその人の背景となる生活や事情を把握した上ではじめて成り立つ仕事と言えます。

教師も同様と言えますが、医療者、看護師は常に生死のリスクと一体の仕事なので、より俊敏で正確に身体で行動化できる「ひとコンピテンシー」の発揮が必要と言えるでしょう。

求められるケイパビリティー

目の前の人(対象者)の状態を正確に把握するためにはどんな能力がいるでしょうか?
話を「聞く」はもちろん必須です、ほかに身体の状況や電子カルテを「見る」という手段がありますが、この「見る、聞く」という情報獲得だけでは不十分です。

発汗、浮腫み、異常などの情報獲得のために「触れる」「嗅ぐ」など五感をフルに働かせ、そこで得た情報を統合して判断できる能力が必要です。

しかし最も重要なのは、その対象者がいまどんな気持ちなのか?‥不安や怒りで拒否的でイヤな気持ちなのか‥あるいは落ち着いて前向きな状態なのか‥焦っているのか‥冷静に自ら改善へ向かう集中力がある状態なのか‥このような患者さんの気持ちを理解、共感できるケイパビリティーの高さが求められます。

Capability:ケイパビリティとはのイメージ図

Capability:ケイパビリティとは

出典『ポートフォリオ評価とコーチング手法(医学書院)』
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看護師はエビデンスを根底とした感覚を活かした情報獲得力と高度なケイパビリティーを備えています。

その仕事は、知性と身体性を統合して成果をあげる能力と言えます。
ケイパビリティー、この能力はどうしたら高まり身につくのでしょうか?

暗黙知は共感で引き継がれる

一定規模以上の医療機関は、外から窺い知れない大変充実した教育体制を備えています、体系化された研修・講義がその内部で日々実施されています。

しかし患者さんの状態、気持ちを理解し共感できるケイパビリティーはそこに数多く参加するだけでは身につきません。
なぜなら医療者、看護師の仕事の本質は、形式化できない暗黙知の積み重ねだからです。

医療者、看護師の仕事は“対人”です、人とどう関わるか?その上で、そのシーンで必要な情報をどう獲得するか?を本質とします。

いまの教育や研修は「形式知」だから‥

この能力が身につくためには、職場の教育や研修に参加するだけでは不十分と言えます。

教育の多くは形式知から成り立っているからです。

“対人”能力は、職場の先輩や仲間が“対人”している様子をごく身近で見たり、自ら経験することが不可欠なのです。人間を相手に遂行するこの仕事に正解はありません。ネットにある動画やAI教材でも叶いません。

看護師の仕事、暗黙知のカタマリとも言えるこの能力を学び、伝承するためには、ともに人に関わり一緒に快方を喜んだり、痛みや辛さに共感したりするシーンを数多く共に経験することが不可欠なのです。

看護師はどう一人前のプロになるか?

医療機関が備える様々な研修、それは必要不可欠なものと言えますが、実際私が長く看護師や看護教育に関わり確信を持って実感するのは、仕事場の多くの先輩や仲間と一緒に仕事をしていく中で、その人たちのふるまい、特にその人たちがどう患者へ言葉や眼差しを注いでいるのをチームで遂行していく中で共感的に学んでいる、ということです。

看護師は、日々の仕事を他者とするなかで無意識のうちに暗黙知を共有しそこで学び成長しているのです。それは、シャドーやオンザジョブトレーニングという言葉では尽くせない奥深いものと言えるでしょう。

ポートフォリオとオンライン学習(2)

デジタル空間を共感溢れる出会いに!

私は、昨年2020年4月のコロナ禍に、オンラインでプロジェクト学習やポートフォリオをスタートしました。今現在もいろいろないろいろな学校や機関と一緒にしています。

オンライン会議の様子

人間的で共感溢れる「オンライン会議」

教員研修も管理職研修も組織全体の未来教育構想も、必要に応じ行うプロジェクトチームとの対話コーチング(面談)もコアメンバーとの戦略会議もすべてオンラインで実施しています。

そのZoom画面はかなり躍動的です。
Zoomスピーカービューで登場する指導者(や上司)の話をそのほかの人が動かずじっと聞くだけということはまずありません。

少しでも疑問があれば首を傾げたり、アイディアがひらめいたらスケッチブックに描き、Zoomカメラ越しに相手にすぐ見せます、手を動かしグラフックを描きつつ、を見せたりもします‥‥形式的なオンラインの使い方を打破するような自由で動きのある振る舞いを敢えて自ら見せ参加者にも促します。

リモート講義というより「同じデジタル空間」

オンラインで講義や会議をする時には、心の距離間なく参加者がどんどん気軽に声やアイディアを出せるよう、私からZoom越しにすごく積極的に話かけます。

オンラインでプロジェクト学習を進めるときも対面(リアル)で行うときと変わりません。

豊かに関わりあうアクティブな学びシーンを実現するために(学習の進捗だけでなく、学習者の考えや気づきなどを知りたいので)Zoom画面でみんなの顔や動きを見ます。その映像は学生のPCカメラだけでなく、その学校の先生がタブレットを手に学生たちのワークショップの様子や手元の作業などをライブで映して届けてくれます。

暗黙知が共感で伝わる未来教育

画面の向こうの学生が行き詰っている様子であれば、「〇〇さん、いま何を判断しようとしているの?私に教えて」という感じで声をかけます。

そうすると‥その人も私もまさしく同じ空間にいるような気持ちになります。「リモート講義」というより「同じデジタル空間にいる」という感じです。

私はそれを何より大事にしています。
ケイパビリティーや暗黙知が求められる医療者や教育者が私の大切な対象者だからです。

オンラインであっても、オンラインだからこそ、この「同じ空間にいる感」が大事です。
同じ空間にいれば一層その人の考えや思いに共感しやすいですから!

「暗黙知は共感で引き継がれる」ここに親しさや互いへの敬意、そしてポートフォリオが大きな効果を発揮します。

次号へ続く

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